半固体モバイルバッテリーは本当に発火しにくい? 各社の試験を調べて、今後は半固体を選ぶことにした
半固体モバイルバッテリーはなぜ従来型より発火しにくいのか。電池の構造、各社の釘刺し・圧壊試験、NITEの事故情報を確認し、安全性を重視して買うなら半固体を選ぶ理由を紹介します。

半固体モバイルバッテリーシリーズ
| 記事 | 概要 |
|---|---|
| 半固体モバイルバッテリーとは? | 半固体の仕組み、全固体電池との違い、メーカーごとに異なる定義や購入前の注意点を紹介します。 |
| メリット・デメリット | 長く使える可能性や安全対策といったメリット、充電の速さや重さ、処分方法など変わらない点を紹介します。 |
| 従来型モバイルバッテリーとの違い | 半固体と従来型の違いを、電池の中身、USB-C、急速充電、最大出力、重さなどから比較します。 |
| 本当に発火しにくい? | 半固体が発火しにくいとされる理由、各社の釘刺し試験や安全対策、事故情報から分かることを確認します。 |
| 寿命と処分 | 「約2000回使える」という数字の読み方、使用をやめるべき異常のサイン、正しい回収・処分方法を紹介します。 |
| おすすめモバイルバッテリー | 半固体・準固体・半固体系の34製品を、容量、出力、重さ、ケーブル、ワイヤレス充電、公称回数、価格で比較し、用途別のおすすめを紹介します。 |
半固体モバイルバッテリーの製品ページを見ると、電池へ釘を刺したり、強い力で押し潰したりしても、煙や炎が出なかった試験映像が掲載されています。
従来型のリチウムイオン電池からは煙や炎が上がっているのに、半固体電池では大きな反応が起きない。あの映像を見ると、半固体のほうが安全そうに感じますよね。
僕も最初は、半固体という新しい言葉を使って、安全そうな印象を与えているだけではないかと疑っていました。そこで、電池の構造、メーカー各社が公開している破壊試験、開発時にうまくいかなかった事例、NITEが公表している事故情報まで確認しました。
調べた結果、安全性を重視して今後モバイルバッテリーを買うなら、半固体を選ぶのがおすすめです。
半固体電池は、従来型より燃えやすい電解液を減らしたり、電解質をゲル状にして動きにくくしたりすることで、電池の内部が壊れたときの急激な反応を抑える構造になっています。市販製品の釘刺し試験や圧壊試験でも、発煙や発火を抑えた結果が公開されています。
ただし、商品名に「半固体」と書かれていれば、どの製品でもよいわけではありません。選ぶべきなのは、使っている電池の特徴を説明し、釘刺しや圧壊などの試験結果と、本体の保護機能まで公開しているメーカーの製品です。
安全性を重視して今後モバイルバッテリーを買うなら、破壊試験と本体の保護機能を公開している半固体製品を選ぶ。これがこの記事の結論です。
半固体は、従来型より発火しにくい構造になっている
一般的なリチウムイオン電池の中には、電気を運ぶための液体である電解液が入っています。この電解液には燃えやすい成分が含まれており、電池の内部が壊れて、本来は触れない正極と負極が接触すると、短時間で温度が上がることがあります。
内部で起きた反応によってさらに熱が発生し、その熱が次の反応を引き起こすと、発熱が止まらなくなる熱暴走へ進みます。モバイルバッテリーから煙や炎が出る事故は、このような流れで起きます。
半固体電池では、メーカーや製品によって方法は異なりますが、液体の電解液を減らしたり、電解質をゲル状にして電池の中で動きにくくしたりしています。
マクセルのMPC-CSSB10000は、固体電解質と液体電解質を組み合わせることで、発熱や発火の原因になり得る電解液を、同社の従来製品と比べて約50%減らしたと説明しています。
エレコムのDE-C86-10000BKは、電解質を液体からゲル状へ変えることで、可燃性成分の揮発やガスの放出を抑えています。電解質以外の材料や加工も見直し、電池全体として発火しにくくした製品です。
燃えやすい液体が少なくなり、ゲル状になった電解質が内部にとどまりやすくなれば、電池が壊れたときに液体や可燃性ガスが一気に広がりにくくなります。内部でショートが起きても、反応が急速に進むのを抑え、発火へ至りにくくできます。
大学や研究機関でも、ゲル状の電解質を使って、リチウムイオン電池の難燃性や高温時の安定性を高める研究が進められています。
2023年に発表された燃えにくいゲル状の電解質に関する研究では、特定のゲルポリマー電解質によって、発火につながる反応を抑える結果が報告されています。別のゲルポリマー電解質の研究でも、熱に対する安定性や高温時の性能を高められることが示されています。
研究で使われた電池と、市販されているモバイルバッテリーが同じものではありません。それでも、電解液を減らしたり、電解質をゲル状にしたりすることが、発火しにくさにつながるという考え方は、メーカーの説明だけではなく材料研究からも支えられています。
半固体は、電池の中で異常が起きないようにする技術ではありません。異常が起きたあと、急激な発熱や熱暴走、発火へ進むのを抑えるための技術です。
発火しないことを保証する電池ではありませんが、従来型より発火事故につながりにくい構造へ改良されています。この構造の違いだけでも、安全性を重視して半固体を選ぶ理由になります。
釘刺し試験は、発火事故につながる内部ショートを再現している
釘刺し試験は、電池へ金属製の釘を刺し、内部で強制的にショートを起こしたときの反応を見る試験です。
普段の生活でモバイルバッテリーへ釘が刺さる場面はまず起きませんが...電池内部の仕切りが壊れ、正極と負極が接触するという、発火事故につながる危険な状態を意図的に作っています。
釘を刺した従来型電池から煙や炎が出るのに、同じ条件で試した半固体電池では発火しないのであれば、半固体のほうが内部ショートによる急激な反応を抑えられていることが分かります。
単に釘が刺さっても壊れなかったという話ではありません。電池の内部が大きく損傷し、発火事故につながるショートが起きた状態でも、従来型より煙や炎が出にくかったという結果です。
圧壊試験では、電池へ強い力を加えて押し潰し、内部が変形したときに急激な発熱や発火が起きないかを確かめます。落下や荷物による圧迫で電池が損傷した場合にも、内部で起きるのは仕切りの破損やショートです。
釘刺し試験と圧壊試験は、電池が大きく壊れたときにも、発火へ進みにくいかを確かめるために行われています。こうした破壊試験で発煙や発火を抑えた半固体製品を選ぶことは、モバイルバッテリーの安全性を高める具体的な方法です。
こういった試験を行っていて安全性が確認できれば、半固体モバイルバッテリーを選ぶ理由になりますよね。
エレコムは、従来型との差が出るまで製品化しなかった
半固体モバイルバッテリーを選ぶうえで、特に参考になったのが、エレコムが発売を一度延期した話です。
エレコムが公開した開発記事によると、同社は当初、現在の製品とは別の半固体電池を採用する予定でした。
ところが、2025年末に採用予定の電池へ釘を刺し、従来型のリチウムイオン電池と比べたところ、安全性にはっきりした差が出ませんでした。
エレコムはそのまま製品化せず、発売を延期して、使う電池の選定と本体設計をやり直しています。その後も釘刺し試験を繰り返し、内部ショートが起きても急激に反応せず、温度が緩やかに上昇する電池を選んだと説明しています。
この開発過程から、商品名に半固体と書かれているだけでは、安全性は決まらないことが分かります。
一方で、従来型との差が確認できなかった電池を採用せず、電池と本体を作り直し、反応の違いを確認してから発売したエレコムのような製品であれば、安心して購入できる材料になりますよね。こういった情報はありがたいです。
半固体モバイルバッテリーを選ぶときは、商品名だけではなく、どのような電池を採用し、従来型と比べてどのような結果が出たのかまで確認すると、より満足できる商品に出会えると思います。
成功した試験結果だけではなく、採用を見送った電池や発売延期まで公開したエレコムの開発記事は、安全性を重視して製品を選ぶうえで、かなり参考になります。
マクセル、バッファロー、CIOも、電池が壊れたときの安全性を確かめている
半固体電池の発火しにくさを試しているのは、エレコムだけではありません。
マクセルのMPC-CSSB10000は、専門機関による釘刺し試験を行い、決められた条件では発煙や発火が起きなかったと説明しています。
電解液を同社の従来製品より約50%減らした半固体電池に加えて、温度保護、過電流保護、過充電電圧保護、過放電電圧保護を搭載しています。電池の構造だけに頼るのではなく、本体側でも異常な温度や電流を検知して停止する構成です。
バッファローのBMPBSA10000BKは、内部ショートを起こす釘刺し試験と、強い力で押し潰す圧壊試験を行い、燃えにくさを確認しています。
バッファローはさらに、破損したセルを湿度がほぼ100%の環境へ72時間置き、空気中の水分と反応して懸念されるガスが発生しないかを、国内の第三者機関で調べています。その結果、対象となるガス成分は検出限界の0.01ppmを下回ったと説明しています。
CIOのSMARTCOBY SLIMⅡ Wireless2.2 SS10Kは、半固体系セルを採用するだけではなく、加熱、短絡、圧迫、落下などの試験を行っています。
CIOは、半固体系のセルへ交換するだけでは自社の安全基準を満たしたことにはならず、電池を収める本体構造や、温度と電流を監視する制御まで含めて評価すると説明しています。
半固体電池の構造に加えて、釘刺し、圧壊、加熱、短絡、落下などの試験を行い、本体側にも温度や電流を監視する仕組みを備える。国内メーカーの半固体モバイルバッテリーは、複数の安全対策を重ねた製品として作られています。
従来型の電池を使った製品にも保護機能はありますが、半固体製品では、燃えやすい電解液を減らすところから安全対策が始まっています。電池そのものと本体の両方で事故につながる原因を減らしていることが、半固体を選ぶ大きな理由です。
実際の事故率はまだ比べられない。それでも、半固体を選んだ方がよさそう
NITEの「『夏バテ(夏のバッテリー)』にご注意を」によると、2021年から2025年までの5年間に通知されたリチウムイオン電池搭載製品の事故は2,140件あり、製品別ではモバイルバッテリーの事故が最も多くなっています。
モバイルバッテリーの発火事故は、購入時に安全性を優先するだけの理由がある問題です。
NITEの資料では、半固体電池を使った製品と、従来型の液体電解質を使った製品を分けて集計していません。それぞれ何台売れ、どのくらいの期間使われ、何件の事故が起きたのかも公表されていないため、実際の事故率を直接比べることはできません。
半固体モバイルバッテリーが国内で増え始めたのは最近です。販売台数や使用期間をそろえた事故統計が出るまでには、まだ時間がかかります。だけど、次に買うモバイルバッテリーを決めるために、数年後の事故統計を待つ必要はありません。
現在確認できる情報を見ると、半固体には発火しにくくなる構造上の理由があり、製品で釘刺し、圧壊、加熱、短絡、落下といった試験が行われています。従来型と比べて、急激な反応を抑えられた製品も販売されています。
安全性を重視するなら、燃えやすい電解液を多く含む従来型よりも、電解液を減らしたりゲル状にしたりし、破壊試験で発火しにくさを確かめた半固体製品を選ぶのが自然です。
公的な事故統計は、発売された製品が長期間使われたあとに蓄積される情報です。購入時には、今確認できる電池の構造、破壊試験、本体の保護機能をもとに、より安全側の製品を選ぶことになります。
その条件を満たしているのが、メーカーが試験結果を公開している半固体モバイルバッテリーです。
選ぶべきなのは、試験結果まで確認できる半固体製品
半固体や準固体という言葉には、すべてのメーカーに共通する一つの定義がありません。
そのため、商品名に「半固体」と書かれているだけの製品ではなく、電池の構造と試験結果を確認できる製品を選びます。
安全性を重視するなら、次の項目を確認してください。
- 半固体電池の仕組みや、電解液をどのように変えたのか説明している
- 釘刺し、圧壊、加熱、短絡、落下などの試験を公開している
- 温度、過電流、過充電、過放電、ショートを監視する保護機能がある
- PSEマークと、製造または輸入した事業者名を確認できる
- 国内の問い合わせ先、保証、回収やリコールの案内がある
PSEマークは、日本でモバイルバッテリーを購入するうえで確認すべき前提です。ただし、PSEマークだけでは、半固体電池の構造や、釘刺し試験でどのような結果になったのかまでは分かりません。
PSEへの適合に加えて、使っている電池、破壊試験、本体の保護機能まで公開している半固体製品を選ぶ。この条件であれば、安全性を重視した購入になります。
価格だけを見て、販売元や試験内容を確認できない製品を選ぶのはおすすめしません。半固体であることに加えて、国内で問い合わせや回収に対応できるメーカーの製品を選びたいところです。
今使っている従来型は、異常がなければ買い替えを急がなくてよい
今後買うなら半固体を選びますが、現在使っている従来型モバイルバッテリーを、半固体ではないという理由だけですぐに捨てる必要はありません。
信頼できるメーカーの製品で、リコールの対象になっておらず、膨張、変形、異臭、異常な発熱などが見られなければ、使い方に注意しながら使用を続けられます。
本体の充電に以前より時間がかかる、残量が急激に減る、スマートフォンへの給電が不安定になった、本体が異常に熱くなるといった変化も、劣化や不具合のサインです。こうした異常が見られた場合は、充電や給電をやめて、メーカーや自治体の案内に従って処分します。
高温になる車内へ置く、強い衝撃や圧力を加える、布団や衣類の中で充電するといった使い方は、半固体でも従来型でも避ける必要があります。
今使っている製品に異常がなければ、無理に買い替えを急がず、次の買い替え時に半固体へ移る。それで十分です。
膨張や異臭、異常発熱が見られたときの対応や処分方法は、半固体モバイルバッテリーの寿命と処分の記事で紹介しています。
今後モバイルバッテリーを買うなら、半固体を選ぶ
半固体は、発火しない電池ではありません。
それでも、燃えやすい電解液を減らしたり、電解質をゲル状にしたりすることで、従来型より発火につながる反応を抑える構造になっています。
市販製品でも、釘刺し、圧壊、加熱、短絡、落下といった厳しい試験が行われています。エレコムのように、従来型との差が出なかった電池を採用せず、発売を延期して電池と本体を作り直したメーカーもあります。
半固体製品がほとんどなかった頃は、安全性が気になっても、従来型の中から信頼できるメーカーを選ぶしかありませんでした。
現在は、マクセル、エレコム、バッファロー、CIOなどから、電池の構造や試験結果を確認できる半固体モバイルバッテリーが販売されています。Ankerは半固体モバイルバッテリーの商品がまだ出ておらず、2026年8月現在では下火になってきているように思いますね。
同じような容量、出力、価格帯の製品から選べるのであれば、従来型をそのまま選び続けるより、発火につながる要因を減らし、破壊試験を行っている半固体を選ぶのがおすすめです。
今後モバイルバッテリーを買うなら、試験内容と本体の保護機能を公開している半固体製品を選ぶ。
半固体がどのような電池なのかは半固体モバイルバッテリーの基礎解説、従来型から買い替えると何が変わるのかは従来型との比較記事で紹介しています。
容量、重さ、充電速度、寿命なども含めて選びたい場合は、メリット・デメリットの記事も確認してください。
確認した情報と、この記事の範囲
この記事は、2026年8月19日から24日にかけて、NITE、メーカー各社の公式ページ、ゲル状電解質に関する研究論文を確認して書きました。
主に確認した情報は次のとおりです。
- NITE「『夏バテ(夏のバッテリー)』にご注意を」
- マクセル「MPC-CSSB10000」製品ページ
- エレコム「DE-C86-10000BK」製品ページ
- エレコムの半固体モバイルバッテリー開発記事
- バッファローの半固体モバイルバッテリー開発・試験記事
- バッファロー「BMPBSA10000BK」製品ページ
- CIOの半固体系バッテリーに関する説明
- CIO「SMARTCOBY SLIMⅡ Wireless2.2 SS10K」製品ページ
- Fire-Inhibiting Nonflammable Gel Polymer Electrolyte for Lithium-Ion Batteries
- Non-flammable Gel Polymer Electrolyte for Enhancing the Safety and High-Temperature Performance of Lithium-Ion Batteries
- Comparative Analysis of Li-Ion Batteries with Carbonate-Based Liquid and PVdF-Based Gel Polymer Electrolytes
記事内で扱った製品について、メーカーから貸与、提供は受けていません。構成と文章の編集にAIを利用し、事実関係は上記の公式情報と研究論文で確認しています。